お金が無くなると、
住みたい場所や食べたい食事が
制限され、苦しいモードに突入してしまう。
僕も大きな失敗をして
しばらくの期間、生活に苦しんだ時期がある。
その時に、お金に対しての解釈や
価値観を再確認することができた。
お金は上を見ると青天井と言われるが
下を見てもしかり。
1億円の預金しかないと自殺する人もいれば、
100万円の借金で自殺する人もいる。
目の前にある貨幣がそこにある事実は
一つしか存在しないが、
その事実から人それぞれ、無数の
解釈が存在するのが面白い。
ある時僕は、
コンビニに寄ってご飯を買おうとした。
財布を開いて見ると
情けない事に500円玉一枚と
小銭がちょこっとしか無かった。
お腹はぺこぺこだ。
お金が足りなかったので、
コンビニの外のベンチに座って
財布に500円しかないことを
改めて考えてみたのだ。
泣くしかない。。。
※画像はイメージです
500円しか無いのかと多くの人は
解釈すると思うが、子供からすると
500円は大金。また、生活が苦しい人には
大金かもしれない。
そんな事を考えながら、
手に持った500円玉を見ていた。
すると引き寄せてしまったのだ。。。。
ベンチの僕の隣に、小柄な
ご年配のおばあさんが座ってきた。
すると突然
「すみません。タバコもらえますか?」
僕
「タバコはありません。コンビニで
買ってください。」
お婆さん
「買いたいけど、買えないのです。
所持金が十円しかなくて。。。」
そんなわけないだろー!
と、内心思った自分がいたが
もう一人の自分が
〜上には上がいた!〜と喜んでいる……
そんな事で喜んでしまう
己の器の小ささにイラっとした。
お婆さんは続けて
「タバコ吸いたいのに、吸えないのは
本当辛いね。。」と
同情の言葉を投げてくる。
無視をしていた僕にお辞儀をして
曲がった腰を上げ、ゆっくりと歩き始めた。
「さようなら」
もう、だいぶお年を召されている。
そんな悲しい後姿を見せるのはやめてくれ。。。
僕もベンチを後に歩き始めた。
歩きながら、
手に持ってた500円玉を見て、
なんだか、突然悲しさがこみ上げてきた。
僕は500円で食べたいお弁当が
食べれず、断念した。
でも、この500円で喜ぶ人もいるのかもな。
この手の中にある500円で、食欲を
満たす使い方をするなら、誰かに
喜んでもらえる使い方の方が
活きるのではなか?
せめて人の為に使おうじゃないか
僕の足はおばあちゃんに向かった。
「おばあちゃん ! タバコは何すってんの?」
振り向いたおばあちゃんは驚きながら口を開く
「え??え??エコーです。」
僕はタバコを買い
おばあちゃんに渡した。
驚いた様子でありがとうと言っている。
別に、見知らぬ おばあちゃんから
お礼が言われたくて買ったわけでは無い。
自分のお弁当が買えなかった悔しさと、
500円で何かの役に立てればという
自己満足の為だ。
財布の中のマネーは無くなり
ホームレスへまっしぐらだ
おばあちゃんが叫んできた
「お兄さん、本当ありがとう!」
振り返らず僕は手だけをあげた。
「お兄さん、本当ありがとう!」
三回、叫んでる。
思わず僕は後ろを振り向き
驚く光景を見た。
片手にタバコを持ち、
おばあちゃんが涙を流しながら
ありがとうと叫んでいるのだ。
ドラえもんのおばあちゃんの思い出という
話の映像を思い出してしまった。
おばあちゃん…
本当にお金が無かったんだ……
その瞬間お弁当を食べないで
見知らぬおばあちゃんの為に
500円でエコーを買って
本当に良かったと
心がスッと軽くなった。
そして、不思議とぺこぺこだった
お腹も満たされていた。
あの日から数年
借金からなんとか這い上がる事が
できた僕は、バリバリ活動をしていた。
そんな中、
いくつかの問題にぶつかってしまい
解決策を見いだせず、苦しんでいた。
そんな時、協力依頼をしていた企業が
最終的な決裁は会長にあると
僕は緊張しながら
ある日応接室にて、
その会長の紹介をもらった。
「本日は、貴重なお時間を
ありがとうございます。」
目の前に立ちはだかる会長の
姿を見て、衝撃が走った。
。。。
え??
エコーおばあちゃん!
まさかのまさかのまさか。
エコーばあちゃんも、
一瞬大変驚いた様子だったが
優しく口を開いた。
「こんにちは。その節は
大変お世話になりました。
なんでもお申し付けくださいませ。」
漫画のような話だが、
エコーばあちゃんのおかげで
全ての問題がクリアになったのだ。
一連の問題が全て解決した日、
僕は御礼を伝えに事務所に伺った。
するとなんと。。。
おばあちゃんは僕からの
支払い代金を受け取らなかったのだ。
金額にすると、かなりの額になる。
あの日あの時、
エコーを買った310円というお金は
何十倍にもなって、僕の元に
戻ってきたのだ。
思わず涙がこみ上げて僕は
ウルウルしながら
おばあちゃんに深く敬礼をして
事務所を出ようとした。
ドアの前に立った時
エコーおばあちゃんが
優しく口を開いた
「お兄さん、一つ
お尋ねしたいのですが、あの日
何故お兄さんは、見知らぬ私の為に
エコーを買ってくれたのですか?
それがずっと気になってて、いつか
お会いした時に聞きたいと思っていたのです。」
僕は振り返りニッコリしながら
口を開いた。
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あの日にエコーを買えた理由は、
僕の全財産が500円だったからです。
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THE END
※この物語は半フィクションです